花見
花見(はなみ)は、主に桜などの花を鑑賞し、春の訪れをことほぐ慣習。ただし、多くの場合、開花した桜の木の下で行われる宴会のことを指す。
概説
桜の木は日本全国に広く見られ、その花は春の一時期にある地域で一斉に咲き、一週間足らずという短い期間で散るため、毎年人々に強い印象を残し、日本人の春に対する季節感を形成する大事な因子となっている。その開花期間の短さ、そしてその花の美しさは、しばしば人の命の儚さになぞらえられる。そのためか、古来、桜は人を狂わせるといわれ、実際花見の席ではしばしば乱痴気騒ぎが繰り広げられる。一方で花を見ながら飲む酒は花見酒と呼ばれ、風流だともされている。陰陽道では、桜の陰と宴会の陽が対になっていると解釈する。
花見の実際
各地域での桜の開花予想日は毎年気象庁から発表され、同じ日に開花予想された地域を結んだ線は桜前線と呼ばれる。この前線はソメイヨシノを基準にしているため、桜によっては若干、開花の時期が前後する事があるので注意が必要である。花見の幹事は桜前線をにらみながら花見の日程を決めることになる。日本の半分以上の地域では、桜の開花時期が会社や学校などの年度の始まりと重なることから、しばしば新人歓迎会として花見は開かれる。一方、年度始まりより前に桜が開花する九州や中国地方西部、東北地方北部、北海道ではこの限りではない。また企業では地元住民との交流のために、敷地を開放することがある。会社や学校の敷地外で花見を行う場合、大規模な花見のために場所取りが必須である。
夜に花見をすることは夜桜を見るまたは夜桜見物と呼ばれ、桜に独特な習慣である。上野公園など一部の名所では夜桜のためにぼんぼりを仮設することがある。
桜吹雪とは一斉に花弁が落ちる様であり、その美しさも花見の一環として愛でられており、全て落花した後には葉桜と呼ばれる状態になる。
花見には花見団子がつきもの。庶民の花見にふさわしいお供として江戸時代から定番となっている。月見で食べる月見団子と対照的に桜色(薄い赤色)・白色・緑色などの色で華やかな色彩をつける。この三色の組合せが一般的で、桜色は桜を表わして春の息吹きを、白は白酒で冬の名残りを、緑はヨモギで夏への予兆を表現している。
「花より団子」という諺は花見団子に由来し、花の観賞という抽象的な行為より、団子という実質を選ぶ行動を揶揄したもの。他にも、「花に嵐」「人の行く裏に道あり、花の山」など。
尚、花見は1本の桜や梅でも行われる。天然記念物クラスの枝振りが見事な桜や梅、歴史のある桜や梅などの下では、茶席が設けられる事が多い。
花見の将来
実際に日本に於ける桜の花見はソメイヨシノを対象としているところが多い。しかしながら、全国の染井吉野の殆どが1本の木のクローンであるため殆どの木が寿命を迎えていると言われている。この為、現在多くの公園などで、桜の植え替えが行われており、これにより開花時期が大きく異なっている。例えば、写真中のともやま公園では、ソメイヨシノの他に、河津桜、吉野桜などを交互に植える等の桜並木の延命作業を行っている。 この為、開花時期の異なる木が混在するなど、僅かながら花見の時期も異なり始めている。
お花見歴史
花見は貴族の行事が起源だと言われている。奈良時代には梅が鑑賞されていたが、平安時代に桜と変わってきた。嵯峨天皇が宮中で催した宴が最初の桜の花見だとの説がある。平安時代の宮中の花見は『源氏物語』「花宴」に描かれる。『源氏物語』には藤を鑑賞する宴会についての記述もあるが、この頃には「花」はほぼ桜と同義に使われるようになっていたためか、桜以外の花を観賞する宴が花見、花宴といわれることはない。
吉田兼好の『徒然草』には貴族風の花見とそうでない田舎ぶりの花見の違いが説かれており、室町初期には地方の武士階級にも花見の宴は行われていたことが伺える。
織豊期には野外に出て花見をしたことが、絵画資料から確認される。この時期のもっとも大規模な花見は豊臣秀吉の醍醐の花見である。
花見の風習が広く庶民に広まっていったのは、江戸時代、徳川吉宗が江戸の各地に桜を植えさせ、花見を奨励してからだといわれている。江戸で著名な花見の名所には愛宕山 (港区)などがある。この時期の花見を題材にした落語としては『長屋の花見』や『あたま山』がある。
主な日本の桜の名所
* 二十間道路桜並木(北海道静内郡新ひだか町)
* 松前城(北海道松前郡松前町)
* 弘前公園(鷹揚公園)(青森県弘前市)
* 白石川堤(宮城県柴田町から大河原町にかけて)
* 三春の滝桜(福島県田村郡三春町))
* 上野恩賜公園(東京都台東区)
* 井の頭恩賜公園(東京都武蔵野市・三鷹市)
* 新宿御苑(東京都)新宿駅・千駄ケ谷駅
* 実相寺(山梨県北杜市): 神代桜で有名
* 高遠城址公園(長野県伊那市):コヒガンザクラで名高い。
* 岡崎公園(愛知県岡崎市)
* 根尾谷・淡墨公園(岐阜県本巣市): 淡墨桜で有名
* 嵐山(京都市)
* 大阪造幣局(大阪府大阪市):桜の通り抜け
* 夙川公園(兵庫県西宮市)
* 吉野山(奈良県吉野町):吉野桜の本場
* 吉香公園・錦帯橋(山口県岩国市)
* その他
o 日本さくら名所100選
o 飛騨・美濃さくら三十三選
主な日本の梅の名所
* 吉野梅郷(東京都青梅市)
* 偕楽園(茨城県水戸市)
* 熱海梅園(静岡県熱海市)
* 梅林公園(岐阜県岐阜市)
* 月ヶ瀬梅渓(奈良県月ヶ瀬村)
* 賀名生梅林(奈良県西吉野村)
* みなべ梅林(和歌山県日高郡みなべ町)
* 西田梅(福井県三方町)
桜や花見に関連した作品
* 落語
o 百年目
o あたま山(頭山)
o 長屋の花見(貧乏花見)
o 花見の仇討ち
o 花見酒
* 能
o 西行桜(さいぎょうざくら)
o 小塩(おしお)
* 狂言
o 花盗人
* 小説
o 井上靖 『化石』角川文庫 高遠城址公園の桜
o 梶井基次郎 『櫻の樹の下には』
o 坂口安吾 『桜の森の満開の下』講談社文芸文庫
o 柴田よしき『桜さがし』集英社文庫
o 乃南アサ 『花盗人』新潮文庫
* 映画
o 吉田秋生原作『櫻の園』(中原俊監督、1990年)
* 音楽
o 『雪月花』 箏曲 三橋検校作曲
o 『桜尽し』 地歌(箏曲) 佐山検校作曲
o 『西行桜』 地歌(箏曲) 菊崎検校作曲
o 『長等の春』 地歌(箏曲) 菊岡検校作曲
o 『桜川』 地歌(箏曲) 光崎検校作曲
o 『花の縁』 地歌(箏曲) 吉沢検校作曲
o 『春の曲』 箏曲 吉沢検校作曲
o 『山桜』 箏曲 吉沢検校擦曲
o 『新雪月花』 箏曲 吉沢検校作曲
o 『稚児桜』 箏曲 菊武検校作曲
o 『さくら変奏曲』 宮城道雄編曲
o 『花紅葉』 宮城道雄作曲
o 『桜狩』 山田流箏曲 山田検校作曲
o 『花の雲』山田流箏曲 山勢検校作曲
o 『桜見よとて』 端唄・小唄
o 『桜狩』 薩摩琵琶
o 『花』(滝廉太郎)
o 『さくらさくら』(日本古謡)
その他、サクラ (曖昧さ回避)も参照。